さえずり)” の例文
末造はその話の内容を聴くよりは、かごに飼ってある鈴虫の鳴くのをでも聞くように、可哀らしいさえずりの声を聞いて、覚えず微笑む。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
春日ののどかなる趣は、ありふれた小鳥のさえずりよりも、雞の鳴声よりも、かえってこの雉子の声において深められたかの感がある。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
その声が語りつづけるに従って、彼は心ひかれて、そういうさえずりりをもってる小鳥を見んがために、椅子いすの上でふり返った。見るとオフェリアがいた。
キャラコさんの場合、唱歌は一種の迸出作用で、小鳥におけるさえずりのようなものだといえよう。
キャラコさん:01 社交室 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
家の裏手のほう、神田明神社のあるほうで、しきりにうぐいすが鳴いていた。まだ幼ない鳥とみえ、そのさえずりは片言の舌っ足らずで、笹鳴きのあいだに偶然「ほ、きょきょう」とはいる。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
さえずりや野は薄月のさしながら 嘯山
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
さえずりや絶えず二三羽こぼれ飛び
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)