嗤笑しせう)” の例文
夫が凡て自分や久米を嗤笑しせうし軽蔑して居るやうに聞える。凡そその時の二、三十分間のイヤな心持は、恐らく自分の生涯に二度とあるまい。
学生時代の久米正雄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
私は私の嗤笑しせうすべき賢達けんたつの士のあるのを心得てゐる。が、私自身といへども私の愚を笑ふ点にかけてはあへて人後に落ちようとは思つてゐない。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
種々の点に於て彼は其修業の不完全なりしことを嗤笑しせうさるゝなるべし。彼の漢文は或は漢学者の物笑ひたるべし。彼の史論は或は考証家の首肯しゆこうせざる所なるべし。
明治文学史 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
人々はそんな無理な事が出來るものかと嗤笑しせうした。非難や嗤笑は、世の中の賢顏かしこがほする詰らない男、ガスモク野郎、十把一じつぱひとからげ野郎の必ず所有してゐる玩具おもちやである。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
英吉利の評者が逍遙子に嗤笑しせうせられたるは氣の毒なることなり。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
私は私の愚を嗤笑しせうすべき賢達の士のあるのを心得てゐる。が、私自身と雖も、私の愚を笑ふ点にかけては、敢て人後に落ちやうとは思つてゐない。
後世 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
陶器をペルシア、ギリシア、ワコ、新羅しらぎ南京古赤画なんきんこあかゑ白高麗はくかうらい等を蔵すれども、古織部こおりべ角鉢かくばちほかは言ふに足らず。古玩こぐわんを愛する天下の士より見れば、恐らくは嗤笑しせうまぬかれざるべし。
わが家の古玩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)