喧々けんけん)” の例文
喧々けんけんと争って、彼の顔のそばまで顔を持って来て吠えたり、そろそろ足の先からめ始めて来たりしたので、又八は、ここで弱音よわねを揚げてはと思い
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
口取の右馬介にいわれて、気がつくと、身はいつか、喧々けんけんたる闘犬の声、見物人のどよめき、耳もと近い太鼓の音など——黄塵こうじん万丈の中に来ていた。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どよめき立った数万すうまん大衆たいしゅうは、その時まるでホジクリだされた虫のごとく、地上にあってまッ黒に蠢動しゅんどうし、ただ囂々ごうごう、ただ喧々けんけん、なにがなにやら、さけぶこえ、わめくこえ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
又八の前後にきまとっていた犬まで、わらわらと跳躍して、ほかの群犬と一緒になり、並木のうちの一本の松の樹を取り巻きながら、喧々けんけんと、空へ向って咆哮ほうこうしだした。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天下、犬の喧々けんけんに満ち、犬としいえば、犬のくそでも、その処理には鄭重を極めた。——うそのような世の中が、ほんとに人間へ押しつけられ、人間は次第次第に、畜生以下の観念に馴れて行った。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孔明一行の見つけない装いを見て喧々けんけんと吠えかかる。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
公卿たちの不平は、喧々けんけんごうごうであった。