喚声かんせい)” の例文
夕方になると、士官学校の校庭から、『わ——っ』という喚声かんせいがわき上って、谷一つへだてた、北伊賀町のあたりへ響いて来た。
四谷、赤坂 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
わあと喚声かんせいを揚げて子供たちは逃げる。私も真似をして、わあと、てれくさい思いで叫んで逃げる。曲馬団の者が追って来る。
作家の手帖 (新字新仮名) / 太宰治(著)
そのはげしい気魄に気を呑まれた半纏男達が両方に喚声かんせいをあげて散った。李聖学も、沢田も、思いがけぬ彦太郎の態度を茫然として見つめるばかりであった。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
そのうちに駆け付けた悪者の仲間が二人、三人、小屋の中に裏切ったお六と、銭形平次が居るものと早合点して、どっと喚声かんせいをあげながら、小屋の四方にまきを添えます。
そこをねらって、釣瓶撃つるべうちに、高射砲の砲火が、耳をろうするばかりの喚声かんせいをあげて、集中された。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
敵も急に喚声かんせいをひそめた。そして堀秀政の従兄弟にあたる監物けんもつのすがたが矢倉の下に立った。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
始め、君が代を合唱し始めた時、人々はまるでその歌声を打ち消しでもしようとするような「うおう」という、物すごい集団的な喚声かんせいが、すぐ背後に湧きたち、おし迫ってくるのを聞いた。
霧の蕃社 (新字新仮名) / 中村地平(著)
わあっと喚声かんせいがあがり、また、大石小石! と呼びかける声が遠のいてゆく。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
松尾、南宮、平野をのぞく以外は、すべて戦闘の喚声かんせいだった。
大谷刑部 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
生徒一同、うわーっと喚声かんせいをあげ机を叩き床を踏みならす。
新学期行進曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と予期したとおり大きな喚声かんせいが二階にあがった。
階段 (新字新仮名) / 海野十三(著)