唯中ただなか)” の例文
欧羅巴ヨーロッパ文化の唯中ただなかたたずんでいるような、錯雑した気持を覚えたことを、今に忘れることができません。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
その名のとおり、夜の幕の唯中ただなかに、燦然さんぜんかがやく百光を浴びて城のように浮きあがっている歓楽の大殿堂だいでんどうは、どこにむべき吸血鬼の巣があるかと思うほどだった。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かれは父に対する悪評のまっ唯中ただなかにいて、兵たちと共にくわをふるい、黙々と荒地の開墾をやっていた。……みんなはわざと通胤に聞かせるように、しきりに千坂対馬の専横を鳴らし不法を数えたてた。
城を守る者 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)