呉越ごえつ)” の例文
のりの道場に呉越ごえつはない。一視いっしみな御仏みほとけの子じゃ。しかるに、そこもとたちがひきおこした戦争のために、殺された者はそのかずも知れん。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
地形の複雑さに支配される気温降水分布の複雑さは峠一つを隔ててそこに呉越ごえつの差を生じるのである。この環境の変化に応ずる風俗人情の差異の多様性もまたおそらく世界に類を見ないであろう。
連句雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
けだし慶応義塾の社員は中津の旧藩士族にいずる者多しといえども、従来少しもその藩政にくちばしを入れず、旧藩地に何等なんらの事変あるもてんとして呉越ごえつかんをなしたる者なれば、往々おうおうあやまっ薄情はくじょうそしりうくるも
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「天下は、呉越ごえついずれが治めても天下である。法は自立だ」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
一面、年来の呉越ごえつの敵、越後の上杉家とは休戦を調ととのえて、専ら、志向を南方から西進へ転じて来ているのである。この傾向は、信長にとって、実に、何ものよりも警戒を要するところだった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)