吹曝ふきさら)” の例文
一里半ばかり、鼻のもげるような吹曝ふきさらしの寒い田圃道たんぼみちを、腕車くるまでノロノロやって来たので、梶棒かじぼうと一緒に店頭みせさきへ降されたとき、ちょっとは歩けないくらい足が硬張こわばっていた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
一昨年初めて来たとき、軽井沢駅のあの何となく物々しい気分に引きかえてこの沓掛駅の野天吹曝ふきさらしのプラットフォームの謙虚で安易な気持がひどく嬉しかったことを思い出した。
高原 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
お島がたのしみにして世話をしていた植木畠や花圃はなばたの床に、霜が段々しげくなって、吹曝ふきさらしの一軒家の軒や羽目板に、或時は寒い山颪やまおろしが、すさまじく木葉を吹きつける冬が町を見舞う頃になると
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)