吩付いいつ)” の例文
すると大いに驚いた顔をして「何しろ内へお入り下さい」といい、もう日暮ひぐれでもございましたから店の小厮こものに店を仕舞しまうように吩付いいつけて家へ入った。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
吩付いいつけられて、飼糧桶かいばおけを抱え、裏から軒の外へ廻って行った童子が、そこで、すッ頓狂に、わめいていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するとマユミもまたマユミで、何だかわからないまま両親の吩付いいつけを固く守って、一知が時折コッソリと泣いて頼むのも聞かずに、一度も鍵を外してやらなかったので
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
遠山青年の家へ遊びに行つてくるやうに、と吩付いいつかつた日は、映画見物に行つてしまつた。
波子 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
まだ昼飯も食べていないので台所へ行って自分で飯を焚いておあがりと吩付いいつけた。
故郷 (新字新仮名) / 魯迅(著)
もし小僧が吩付いいつけられた時分にいやがってやらないと、何かにかこつけて太い棒でぶんぐられる。小僧は擲ぐられるよりぬすとをする方が楽ですからその命に従って盗をやる。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
それからその下僕しもべは私の吩付いいつけた通り将校の宅の方へ参って、その奥さんに「どうか書面を貰ってくれろ」といって頼みますと、その奥さんがすぐに関所へ駈け付けて来たです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)