吊革つりかわ)” の例文
友よ、友よ、君たちはいる、にこやかに新しい書物をかかえながら、涼しい風の電車の吊革つりかわにぶらさがりながら、たのしそうに、そんなに爽やかな姿で。
鎮魂歌 (新字新仮名) / 原民喜(著)
若い女は丈伸せのびをするほど手を延ばして吊革つりかわ握締にぎりしめる。その袖口そでぐちからどうかすると脇の下まで見えきそうになるのを、しきりと気にして絶えず片手でメレンスの襦袢じゅばんの袖口を押えている。
深川の唄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
電車の吊革つりかわにつかまるのさえ不潔で、うつりはせぬかと気味わるく思っていたのですが、いまは私が、そのいつかの女のひとの手と同じ工合になってしまって、「身の不運」という俗な言葉が
皮膚と心 (新字新仮名) / 太宰治(著)