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吉兵衞
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きちべゑ
奧へ通じたれば天忠聞て大膳と
有ば
我甥なり遠慮に及ばず直に
居間へ通すべしとの事なれば取次の侍案内に及べば大膳は
吉兵衞左京の兩人を
ば吉兵衞と改め
出精して奉公しける程に
利發者なれば物の用に立事
古參の者に
増りければ程なく
番頭三人の中にて
吉兵衞には一番
上席となり毎日々々
細川家の
御館へ參り御用を
懷中なし
然も
甲斐々々しき
出立にて逃出さんとするところへ
火事騷ぎの中なれ共家主
吉兵衞は大切の
囚人の女房ゆゑ萬一
取逃しもせば
役儀に
關ると
駈着來り
今逃出んとするお政を