台処だいどころ)” の例文
旧字:臺處
有合ありあわせた小杉紙こすぎがみ台処だいどころ三帖さんじょうばかり濡して来て、ピッタリと惣右衞門の顔へ当てがって暫く置いた。新吉はそれ程の悪党でもないからブル/\ふるえて居りまする。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
食物は時折電話でてんやものを取寄せ、掃除は月に一、二度派出婦を呼んでさせるので、台処だいどころの流しや戸棚の中は家族の多い貧乏世帯よりはかえって奇麗になっている。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ある日わたくしは台処だいどころの流しで一人米をとぎながら、ふとなかばあけてあった窓の外を見た時、破垣の上に隣の庭の無花果いちじくが枯葉をつけた枝をさし伸しているのを見て、何というきたならしい枯葉だろう。
枯葉の記 (新字新仮名) / 永井荷風(著)