古傷ふるきず)” の例文
丁子屋ちやうじやに元居た下女から思ひ付いて、白粉を濃く塗つて、前髮鬘を附けて、首筋へ古傷ふるきずを描いた。あの古傷がだ。
銭形平次捕物控:050 碁敵 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
かれも、それをいわれることは、古傷ふるきずにさわられるような気持がすると見えて、舌打ちをしながら、お米の側へ来て坐った。するとお米は、「あら……」と、後ろへ手をついて
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「だがな、錢形の、曲者は腕の立つた浪人者か何んかで、左の頬にかなり大きい古傷ふるきずがあるんだぜ」
ここへ来ては金剛千早の日の古傷ふるきずもあわせて痛んでいたかもしれない。正成はさっきからすでに跛行びっこを曳いていたのである。で、弓杖を持つといくぶん姿勢を直してほっと先頭で一ト息していた。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
パツと肌脱になつて後ろを向くと、頸筋から背中へかけて、斜一文字に、物凄い古傷ふるきずの痕。
『上野介どのならば、おもてのうちか、身のうちに、古傷ふるきずがある筈——』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
心の古傷ふるきずのふといたむときには