口遊くちずさ)” の例文
一杯の酒のために、体を動かすことがものくなって来た。高揚された気分が、しだいに重苦しく沈んで来る。彼は低い声で、かつての軍歌を口遊くちずさんでいた。
幻化 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
又八の眼は、時々、不安な浮かない顔つきになって、じっとお甲の容子ようすに見入った。お甲はそれを感じながら、武蔵の膝へ手をかけ、このごろ流行はやる歌というのを、細い美音で口遊くちずさんで
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのうちに彼は不図無意味に近くかう口遊くちずさんだ。
アトモス (新字旧仮名) / 原民喜(著)
死といっても、死について哲学的省察しょうさつをしているわけでない。自殺を考えているのでもない。ただぼんやりと死を考えているだけだ。酒を飲み、卓にひじをついて、歌を口遊くちずさんでいる。
幻化 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
京わらんべの口遊くちずさ