十手じつて)” の例文
「いや、まだ夜半よなかだが、お前に良いものを見せてやる、相手は思ひの外手剛いかも知れない、拔かりもあるめえが、十手じつてを忘れるな」
かけければ三人はたゞゆめに夢見し心地にて引立ひきたてられつゝ行所に身のたけ六尺有餘の大男おほをとこ黒羽二重くろはぶたへ小袖こそでに黒八丈の羽織朱鞘しゆざや大小だいせう十手じつて取繩とりなはこしさげのさ/\と出來りしに小猿三吉はこし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
フト自分の腰に手をやつて見ると小判の包を懷中へ入れるために、腰へ移した筈の大事な十手じつてがどうした事か無くなつて居るではありませんか。
待つた。うつかり恐れ入つたりすると、懷ろの十手じつての手前、お前さんを縛らなきやならない。お扇、お篠姉妹を喰ひ物にして、長い間世の中の人を
そんなあごの長い間拔けなつらを、御かみが雇ひ入れるものか、——さては玩具おもちや十手じつてなんか振り回して、私を手籠めにする氣で來たんだらう、惚れたら惚れたと、戀文でも書いてよ
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)