劇甚げきじん)” の例文
この競争劇甚げきじんの世に道楽なんどとてんでその存在の権利を承認しないほど家業に励精れいせいな人でも少し注意されれば肯定しない訳に行かなくなるでしょう。
現代日本の開化 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
地震津波台風のごとき西欧文明諸国の多くの国々にも全然無いとは言われないまでも、頻繁ひんぱんにわが国のように劇甚げきじんな災禍を及ぼすことははなはだまれであると言ってもよい。
天災と国防 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「震災後二年を隔てゝ夏秋の交に及び、先生時邪に犯され、發熱劇甚げきじんにして、良醫交〻こも/″\きたしんし苦心治療を加ふれど効驗なく、年八十にして七月十八日溘然かふぜん屬纊ぞくくわう哀悼あいたうを至す」
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
主人の逆上も小事件に逢う度に一層の劇甚げきじんを加えて、ついに大事件を引き起したのであるからして、幾分かその発達を順序立てて述べないと主人がいかに逆上しているか分りにくい。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)