劃策かくさく)” の例文
むす子も、むす子の父親も、かの女の突然なものものしい劃策かくさくの幼稚さにあきながら、また名案であるかのように感心もした。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
すべての劃策かくさくは水泡に帰した、と正太は歎息した。彼は仲買人として、別に立つ方法を講じなければ成らない、とも言った。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
精悍無比せいかんむひのきこえある鬼武蔵が、じっと、鳴りをしずめておるには、何ぞ、劃策かくさくがあるにちがいない)
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奈辺なへんにあるや疑うばかりでなく、それぞれに危懼きぐ劃策かくさくを胸に包んでいると見えて、ちょっとの間だったけれども、妙に腹の探り合いでもしているかのような沈黙が続いた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
雅致があるというが、それは何も劃策かくさくされたものではない。無造作に必然のなりゆきに任せてある。それだから雅致が豊に出るのだとそういってよい。いわば美や醜のわずらいがない作なのである。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
しぼって劃策かくさくした悪の大事業は、なんの因縁か、名月の晩にはじまって、名月の晩にくずれた。敗軍の将兵を語らずというから、その口では申されまい。この江漢がすべての魂胆を割ッて申そう
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とにかく、相当な賢者がいて、両者の会合を劃策かくさくしたことは確かである。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)