前半まえはん)” の例文
異国織りらしい帯の前半まえはんへ、異国製らしい形をした、金銀や青貝をちりばめた、懐剣を一本差しているのが、この乙女を気高いものにしていた。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と、しゃがむと、扇子を前半まえはんに帯にさして、両手を膝へ、土下座もしたそうに腰を折って
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
白い筒袖の仕事着を引掛けているから着物の柄はわからないが、垢の附かない五日市の襟をキュッと繕って、白い薄ッペラな素足に、八幡黒やはたぐろ雪駄せった前半まえはんに突かけている。江戸前のシャンだ。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
六尺豊かの筋骨たくましい鬚男ひげおとこで、髪は結髪けっぱつにした上から、手拭で頬かむりをし、眼先なかなかものすごく、小刀を前半まえはんにし、大刀を後ろの柳の木へ、戸板を結びつけたしきりへ立てかけて置いて
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
小宮山は切歯はがみをなして、我赤樫あかがしを割って八角に削りなし、鉄の輪十六をめたる棒を携え、彦四郎定宗ひこしろうさだむねの刀を帯びず、三池の伝太光世みつよ差添さしぞえ前半まえはん手挟たばさまずといえども、男子だ、しかも江戸ッ児だ
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
前半まえはん手挿たばさんだ小刀へピタリと手をかけたものである。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)