前人ぜんじん)” の例文
古玩は前人ぜんじんの作品なり。前人の作品を愛するはかならずしも容易のわざにあらず。われは室生犀星むろふさいせいの陶器を愛するを見、その愛を共にするに一年有半を要したり。
わが家の古玩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
余が博士を辞する時に、これら前人ぜんじんの先例は、ごうも余が脳裏のうりひらめかなかったからである。——余が決断を促がす動機の一部分をも形づくらなかったからである。
おのれはしかじかの事を、しかじかに、しかじかに感じたり、その観方みかたも感じ方も、前人ぜんじん籬下りかに立ちて、古来の伝説に支配せられたるにあらず、しかももっとも正しくして
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)