刻下こくか)” の例文
炳乎へいことして明らかに刻下こくかの我をてらしつゝある探照燈のやうなものである。従つて正月が来るたびに、自分は矢張り世間なみ年齢としを取つて老い朽ちて行かなければならなくなる。
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
不協音の芸術、混乱妄動まうどうの芸術、僕が刻下こくかの生活はより多くこの末来派の思想に傾倒せざるを得ない。なぜなら僕の生活は分裂して居る。中心もない、調和はもとよりない、右往左往に妄動まうどうを続けて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
うまい局所へ酒がまはつて、刻下こくかの経済や、目前の生活や、又それに伴ふ苦痛やら、不平やら、心の底のさわがしさやらを全然痲痺まひして仕舞つた様に見える。平岡の談話は一躍いちやくしてたかい平面に飛びがつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)