到著とうちゃく)” の例文
弘前にある渋江氏は、貞固が東京を発したことを聞いていたのに、いつまでも到著とうちゃくせぬので、どうした事かと案じていた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
頭の黒い真宗しんしゅう坊さんが自分の枕元に来て、君の文章を見ると君は病気のために時々大問題に到著とうちゃくして居る事があるといふた。それは意外であつた。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
横須賀航空隊のN大尉とS中尉は、それぞれ陸上偵察機を操縦してA飛行場に向けて長距離飛行を行い、目的地に到著とうちゃくして機翼きよくをやすめるひまもなく、直ちに帰還の途についた。
空中に消えた兵曹 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
姉の死と同時に私のところの家庭はもう久しく予期された行きづまりに到著とうちゃくした。残されたのは頭が悪くてもののいえない七十をこした兄と六十に手のとどく私、どうにもならない。
結婚 (新字新仮名) / 中勘助(著)
彼等は火の光と煙塵えんじんの見えないときを待っていたから、到著とうちゃくが遅れたのである。
不周山 (新字新仮名) / 魯迅(著)
「今度到著とうちゃくの日取を知らせてやったから、たぶん来るかもしれないよ」
故郷 (新字新仮名) / 魯迅(著)