刑戮けいりく)” の例文
「貴公はよく人に鬼を見せるというが、今わたしの眼の前へその姿をはっきりと見せてくれ。それが出来なければ刑戮けいりくを加えるから覚悟しなさい」
主水もんど以来の熱心な信者が、刑戮けいりくに洩れて、地下に潜み、あるいは転び切支丹となって、ひそかに邪宗門帰依を続けていたことは充分想像されることで
いったん浪士らが金沢藩にくだったと見ると、虎の威を借りて刑戮けいりくをほしいままにするとはなんという卑怯ひきょうさだと。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
長門ながとと筑前の盲人の頭目には、二、三の刑戮けいりくに触れた者さえあったが、土地旧来の慣習はどこまでも彼らを援護したのみならず、なお背後には天台本山の、尻押というものが実はあった。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
先に死んで刑戮けいりくをまぬかれた幸運の甚右衛門は、専ら旅先で贋金をつかっていたのであるが、他の商人四人は江戸市中で巧みに使用したことを白状した。
半七捕物帳:28 雪達磨 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
刑戮けいりくに洩れて地下に潜み、或は轉び切支丹となつて、ひそかに邪宗門歸依を續けてゐたことは充分想像されることで、ガラツ八がかう言つた言葉も決して好い加減な出鱈目でたらめではなかつたのです。
周囲の者がその刑戮けいりくをあえてさせたのだと言うものも出て来た。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)