出水しゆつすゐ)” の例文
その渓潭けいたんの美しさを説かなかつたならば、かれもその妻を谷の中に置いて来てゐるので、昨日きのふ今日の出水しゆつすゐで何処か通れなくなつてゐれば止むを得ないが、さうでなければ
山間の旅舎 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
かしら申付まをしつけなら、拙者は誰のしたにでも附いて働きます。その上叛逆人ほんぎやくにんが起つた場合は出水しゆつすゐなどとは違ひます。貴殿がおことわりになるなら、どうぞお一人で上屋敷かみやしきへおいでになつて下さい。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
本所ほんじよも同じやうに所々しよ/\出水しゆつすゐしたさうで、蘿月らげつはおとよの住む今戸いまど近辺きんぺんはどうであつたかと、二三日ぎてから、所用しよゝうの帰りの夕方ゆふがた見舞みまひに来て見ると、出水でみづはうは無事であつたかはりに、それよりも
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
先年出水しゆつすゐの時、城代松平伊豆守殿へ町奉行が出兵を願つたが、大切の御城警固おんしろけいごの者を貸すことは相成らぬとおつしやつたやうに聞いてをります。一応御一しよにことわつて見ようぢやありませんか。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)