処女心おとめごころ)” の例文
旧字:處女心
自分の顔を見るのもまばゆそうに、動悸ときめきを抑えて、じっとそこに固くなっていると、自分もともに処女心おとめごころに返って、相手の者と同じような初心うぶ動悸ときめきを覚えるのだった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なかでも呉服は、処女心おとめごころから、若い先達の優雅かぎりない、その姿に魅せられたものか、眼に愛慕の光を宿し、頬に羞恥の紅潮をさして、まじろぎせず、宮家を見守った。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
わたくしから申し告げても、もしこんどの縁談も気がすすまず、種々いろいろと、泣いてなど、処女心おとめごころを申されると、女は女の気もちにくみしていてけとも云われなくなります
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
尼は、彼女のした事を、まったく処女心おとめごころの盲目にした事とでも思っているらしい。取返しのつかない過失と、自分が大罪でも犯したように、恐怖しているらしいのである。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……処女心おとめごころとよく人は危うげに申すが、貴女はよくもこの藤吉郎どのを見立てなされた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼には、処女心おとめごころの清純というものを、この時、可憐いとしいと思うような余裕はなかった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と思い、この頃のように、独り悩んでいる複雑な気持は、そうした処女心おとめごころからいつのまにか遠くなっている証拠でもあろうかと考えて来て、針を運ぶ縫物ぬいもののうえに、何とはなくほろりと涙がこぼれた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いわば親孝行をおとりに遊ばして、処女心おとめごころをだましたのでございます
日本名婦伝:太閤夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)