凡々ぼんぼん)” の例文
時々取り出しては慈母じぼ霊前れいぜんぬかずくがごとく礼拝した「この人形の折檻せっかんがなかったら自分は一生凡々ぼんぼんたる芸人の末で終ったかも知れない」
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「む、それはよいな。——だが、待てよ、家康いえやすの領内をこえていかにゃならぬ。腹心の者はみな顔を知られているし、そうかともうして、凡々ぼんぼん小者こものではなんの役にも立つまいのう」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
思えばそちはよくもよくも、ああいう主君のもとに三十年も無事に仕えて来たものじゃ。それも、ただ凡々ぼんぼんではなく、無二の者と、重用されて来たところは、そちも隠居以上、油断のならぬ男とみえる
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)