兵馬倥偬へいばこうそう)” の例文
兵馬倥偬へいばこうそうの日常、政務の繁劇はんげきと、門客の出入りと、睡眠不足と、あらゆる公人的な規矩きくから寸分でも解かれて、ほっと一息つく間に
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今は兵馬倥偬へいばこうそうの塵に汚れていると聞きました、その戦塵の中へ、かよわいかたわ者のわたくしが参ってみたとて何になりましょう。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ただ昔から馬琴ばきん其他の、作物は多く讀んだが、詰りが明窓淨几の人で無くつて兵馬倥偬へいばこうそう成長ひとゝなつた方のだから自分でも文士などゝ任じては居らぬし、世間も大かたうだらう。
兵馬倥偬の人 (旧字旧仮名) / 塚原渋柿園塚原蓼洲(著)
「近衛前嗣卿から贈られた古今こきんです。みずから和歌をもうなどとは思わぬが、兵馬倥偬へいばこうそうのあいだにも、歌心は有りたく思う」
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
王城内で一つの書き物を見ている——兵馬倥偬へいばこうそうかんに、ともかく墨のついたものに一心に見惚れているくらいだから、この甲士の眼には、多少翰墨かんぼくの修養があったものに相違ない。
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
兵馬倥偬へいばこうそうの世にかえりみられず、この名誉ある権門たちが、ひどく物に貧しく、その貧しさにいじけて、すこしも、君側の朝臣あそんであり輔弼ほひつ直臣じきしんであるという、高い気凛きりんも誇りも失っているのを
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)