入寂にゅうじゃく)” の例文
六袋和尚は六日先んじておのれの死期を予知した。諸般のことを調ととのえ、辞世じせいの句もなく、特別の言葉もなく、あたかも前栽へ逍遥に立つ人のように入寂にゅうじゃくした。
閑山 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
僧正は一代の高徳、今や涅槃ねはんの境に入って、た世塵の来り触るるを許さないのであるが、余りにうるさく勧められるので、遂に筆硯ひっけんを命じて一書を作り、これを衆弟子に授けて入寂にゅうじゃくした。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
ことし七十七の夢窓国師が、この九月三十日入寂にゅうじゃくした。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)