元信もとのぶ)” の例文
然るに津軽家は秀信ひでのぶの世にいきおいを失って、南部家の後見うしろみを受けることになり、後元信もとのぶ光信みつのぶ父子は人質として南部家に往っていたことさえある。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
無落款むらくかんなりければ誰が筆にやと問ひしに小僧答へて元信もとのぶの筆といひ伝へたりといふ。さすがに余の眼識は誤らざりけりと独り心に誇りてやまず。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
彼女の八畳の室には、床の間に元信もとのぶの半軸がいつも懸っていて、その下の青銅の鉢には必ず花がけてあった。
掠奪せられたる男 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
しからば大雅たいがか、蕪村ぶそんか、玉堂ぎょくどうか、まだまだ。では光琳か、宗達か。なかなか。では、元信もとのぶではどうだ、又兵衛またべえではどうだ、まだだ。光悦こうえつか、三阿弥あみか、雪舟せっしゅうか、もっともっと。
河豚のこと (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
無論贋物にせものじゃない、正直正銘しょうじきしょうめい、うそいつわりのない上等品ばかり並べておく。上等品だからみんな高価にきまってる。そこへ物数奇ものずきな御客さんが来て、この元信もとのぶの幅はいくらだねと聞く。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
牧谿でなくても三楽を生むか元信もとのぶを生むか桃山芸術を生むかを反省されたい。
しからば大雅たいが蕪村ぶそん玉堂ぎょくどうか。まだまだ。では光琳こうりん宗達そうたつか。なかなか。では元信もとのぶではどうだ、又兵衛またべえではどうだ。まだまだ。光悦こうえつ三阿弥さんあみか、それとも雪舟せっしゅうか。もっともっと。因陀羅いんだら梁楷りょうかいか。
河豚は毒魚か (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)