倚凭よりかゝ)” の例文
あるものは机に倚凭よりかゝつて頬杖ほゝづゑを突いたり、あるものは又たぐる/\室内を歩き廻つたりして、いづれも熱心に聞耳を立てゝ居る様子。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
その額の下に燈臺守の子供らしい娘が倚凭よりかゝつて立つて居た。猶よく見やうとするうちに、一艘の汽船が駿河灣の方から進んで來た。
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
丑松は室の入口に立つて眺めた。見れば郡視学のをひといふ勝野文平、灰色の壁に倚凭よりかゝつて、銀之助と二人並んで話して居る様子。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
丑松が男女の少年の監督にせはしい間に、校長と文平の二人はの静かな廊下で話した——並んで灰色の壁に倚凭よりかゝながら話した。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
とばかりでお節は部屋へ上ると直ぐ着物も着更へずに柱に倚凭よりかゝる、お栄もひどくガツカリした様子をして隅の方に足を投出す。二人とも溜息ばかりいた。
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
私達二人は店の横手の日のあたつた土藏のところに倚凭よりかゝりながら、少年らしい簡單な言葉を交換とりかはすのみでした。
「どうだネ、お墓は綺麗に成つて居たかネ。」と叔父さんは仏壇に倚凭よりかゝりながら、お節に尋ねた。
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
庭の内も今は草木の盛な時で、柱に倚凭よりかゝって眺めると、新緑の香に圧されるような心地がする。
朝飯 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と小聲で言つて聞かせますと、子供も石の柵に倚凭よりかゝつて眺めました。