便宜びんぎ)” の例文
其の土地の長者が駅館を主どり、駅館は官人や身分あるものを宿泊休憩せしめて旅の便宜びんぎを半公的に与える制度から出来たものである。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
召て其方ひそかに彼が旅宿のへんへ參り密々明日の出立の時間じかんを聞合せ參るべしと申付らる近習はやがて上本陣の邊りへ立越便宜びんぎ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
同じ町内の交誼よしみで椿岳は扇面亭の主人とはいたって心易く交際つきあっていて、こういう便宜びんぎがあったにもかかわらず、かつて一度も書画会を開いた事がなかった。
……されば、逐々ありありて戻り来しか。来る年も来る年も待ちったが、冥土の便宜びんぎ覚束いぶせしないか、いっこう、すがたをお見されぬ。今もいま、ばば刀自とじ愚痴かごというていた。……ああ、ようまあ戻り来しぞ。
生霊 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
さもあれ、情火じゃうくわちからを、とき便宜びんぎあたへければ