侵掠しんりゃく)” の例文
支那国にては戦争利なく国人数千戦死し、かつ数府を侵掠しんりゃく敗壊せらるるのみならず、数百万金を出して火政の費をあがなうに至れり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
吾人はその経歴や功績を見てたどるべき道を知る、前弁士は清盛きよもり頼朝よりとも太閤たいこう家康いえやす、ナポレオンを列挙し吾人の祖先がかれらに侵掠しんりゃくせられ
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
秀吉は政宗に侵掠しんりゃくの地を上納することを命じ、米沢三十万石をもとの如く与うることにし、それで不服なら国へ帰って何とでもせよ、と優しくもあしらい、強くもあしらった。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
大胆にも彼はその途中から引き返し、潜行して自宅にもどって見ると、家はすでに侵掠しんりゃくを被って、ついに身の置きどころとてもなかったが、一策を案じてかくれたのがその天井裏だ。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ないしは粗暴をきわめた侵掠しんりゃくと誘惑の畏れなども、幾分か自然に近く解釈しえられるかと思われ、これと相関聯する土地神の信仰に、顕著な特色の認められるのも、畢竟ひっきょうはこの民族の歴史が
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
さればこれらの分配通信の機関は火の原をくがごとく、水のしもに就くがごとく、かの政治的の境界をば日に侵掠しんりゃくして経済的の領地となさしめたり。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
さらに手塚君の説をばくさねばならん、手塚君は英雄は個人主義である、英雄は民衆を侵掠しんりゃくしたといった、侵掠か征服かぼくはいずれたるかを知らずといえども
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
英雄なる文字は畢竟ひっきょう奴隷どれいなる文字の対象であります、私共の祖先は英雄の奴隷どれいであったのです、個人の権利を侵掠しんりゃくして自己の征服欲を満足させたものは英雄であります
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)