伊勢久いせきゅう)” の例文
そこは平田門人仲間に知らないもののない染め物屋伊勢久いせきゅうの店のある麩屋町ふやまちに近い。正香自身が仮寓かぐうするころもたなへもそう遠くない。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「そうでしたよ。ちょうど、わたしは京都の方でしたよ。あの手紙は伊勢久いせきゅうの店のものに頼んで、飛脚で出したように覚えています。」
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
京都麩屋町ふやまちの染め物屋で伊勢久いせきゅうと言えば理解のある義気に富んだ商人として中津川や伊那地方の国学者で知らないもののない人の名が、この正香の口から出る。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
友だちが世話になったと書いてよこした京都麩屋町ふやまちの染め物屋伊勢久いせきゅうとは、先輩暮田正香くれたまさかの口からも出た平田門人の一人ひとりで、義気のある商人のことだということを知った。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
幸い京都麩屋町ふやまち伊勢久いせきゅうは年来懇意にする染め物屋であり、あそこの養子も注文取りに美濃路みのじを上って来るころであるから、それまでにあつらえる品をそろえて置きたいと言った。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ほら、君もおなじみの京都の伊勢久いせきゅう——あの亭主ていしゅから、景蔵さんのところへ染め物を届けてくれと言われて、厄介やっかいなものを引き受けて来ましたが、あいにくと、また景蔵さんは留守の時さ。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)