仙人掌サボテン)” の例文
墓地へ行く道に、巨きな仙人掌サボテンが繁つてゐて、いまでも、私、よく覚えてゐるのよ。山田五十鈴位の美人だつたらもつと、あの旅はよかつただらうと思つたわ
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
低い、影の蹲ったようないら草の彼方此方から、巨大な仙人掌サボテンがぬうっと物懶く突立っていた。
翔び去る印象 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
わが邦の今も小児のみか大人まで蟹の両眼八足を抜いて二蛪つめのみであるかせたり蠅の背中に仙人掌サボテンとげを突っ込みのぼりとして競争させたり、警察官が婦女を拘留して入りもせぬ事を根問ねどいしたり
ふるさとも可懐なつかしい、わずかに洋杖ステッキをつくかつかぬに、石磴の真上から、鰻が化けたか、仙人掌サボテンが転んだか、棕櫚しゅろが飛んだか、もののたくましい大きな犬が逆落しに(ううう、わん、わんわん!)
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ガラス張の屋内温室の、棕梠や仙人掌サボテンの間に籐椅子がいくつかあり、その一つの上に外国新聞がおきっぱなしになっている。人がいた様子だけあって、そこいらはしんとしている。
スモーリヌイに翻る赤旗 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
都鳥と片帆の玩具おもちゃつとに挿した形だ、とうっとり見上げる足許あしもとに、蝦蟇ひきがえるが喰附きそうな仙人掌サボテン兀突こつとつとした鉢植に驚くあとから、続いて棕櫚しゅろの軒下にそびえたのは、毛の中から猿が覗きそうでいながら
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)