他哩たわい)” の例文
作は四五人の若いものに取囲まれて、しきりに酒をいられていたが、その目は見据みすわって、あんぐりした口や、ぐたりとしたからだが、他哩たわいがなかった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
圭一郎はY町の妻の實家の近所の床屋にでも行つて髮を刈り乍ら他哩たわいのない他人の噂話の如く裝つてそれとなく事實を突き留めようかと何遍決心したかしれなかつた。が、いざとなると果し兼ねた。
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
と、それだけが庸三の耳にはっきりき取れるだけで、何をきいても他哩たわいがなかった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「そうね、商売に出たてにはそんなこともあったようだわ。あんな時分は訳もわからず、ぼーっとしているから、他哩たわいのないものなのよ。先だって若いから、恋愛ともいえないような淡いものなの。」
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)