人糞じんぷん)” の例文
何故といふに梅が香は人糞じんぷんの如き高き香にあらねばやや遠き処にありてこれを聞くには特に鼻の神経を鋭くせずば聞えず。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
祭典中のラサ府 さていよいよモンラムが始まるとなると、ラサ府の市街に行列して居った人糞じんぷんはどこかへすっかりと持運ばれて綺麗きれいになってしまう。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
み取り便所は如何いかに改善すべきか?」という書物を買って来て本気に研究したこともあった。彼はその当時、従来の人糞じんぷんの処置には可成かなりまいっていた。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
人糞じんぷんの臭気があるというドリアンの木もある。巡査は手を鼻へやってかぐまねをしてそして手をふって「ノー・グード」と言い、今度は食うまねをして「ツー・イート・グード」と言う。
旅日記から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
溝は大小便の溜池 その溝にはラサ婦人のすべてと旅行人のすべてが大小便を垂れ流すという始末で、その縁には人糞じんぷんが行列をして居る。その臭い事といったら堪らんです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
にくのことには、私の場合、犬馬の労もなにも、興ざめの言葉で恐縮であるが、人糞じんぷんの労、汗水流して、やっと書き上げた二百なにがしの頁であった。それも、決して独力で、とは言わない。
創作余談 (新字新仮名) / 太宰治(著)
けれどもそれも自然と慣れるです。そうしてこっちが其便それを済まして来ますと犬は先を争うてその人糞じんぷんを喰いに来る。だから西北原の内には便所はないけれど人糞の転がって居るような事もない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)