二棹ふたさお)” の例文
障子ふすまくすぼれたその部屋には、持主のいない真新しい箪笥が二棹ふたさおならんでいて、嫁の着物がそっくり中に仕舞われたきり、錠がおろされてあった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
九州の秋月という大名の長持が二棹ふたさお来たが、その茶屋へ休んでいると、長持の親方が二人来て、同じく床几しょうぎに腰をかけて酒を飲んでいたが、おれに言うには、手前はわずらったな
四畳半には長火鉢ながひばち箪笥たんす二棹ふたさおと机とが置いてある。それで、阿久と、お袋と、阿久の姉と四人住んでいるのである。その家へある日私の友達を十人ばかり招いて酒宴を催したのである。
深川の散歩 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
死んだかみさんの衣裳いしょうが、そっくりそのまま二階の箪笥に二棹ふたさおもあると云うことも、姉には可羨うらやましかった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)