二女ふたり)” の例文
G——は二女ふたりの気分で、武村のことをI子が寿美子に話して、厳しく小言を言つたことが直感された。
彷徨へる (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
二女ふたりは今まで争ッていたので、うるさがッてへやを飛び出した吉里を、お熊が追いかけて来たのである。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
「兄様。いま仰っしゃった二女ふたりの母とは——それは、私たちのおっ母さんとはちがうのですか」
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
砂丘つづきの草を踏んでと、学生が見ていると、たちどまっていた二女ふたりが、ホホホと笑うと思うと、船の胴をふなべりから真二つに切って、市松の帯も消えず、浪模様のもすそをそのままに彼方むこうへ抜けた。
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
張り替えたばかりではあるが、朦朧もうろうたる行燈あんどう火光ひかげで、二女ふたりはじッと顔を見合わせた。小万がにッこりすると吉里もさもうれしそうに笑ッたが、またさも術なそうな色も見えた。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
二女ふたりは長い間、すごい勢いで言い合った。傍で制する磯野のことばも耳に入らなかった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「そうか。……いやそうだろう。あの銀の釵なら、二女ふたりの母親が、若い頃にしていた品、その釵が、淫奔いんぽんな血とつきまとって、お里に愛され、お八重にまで持たれて行った——怖ろしい気がする」
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)