二合半こなから)” の例文
「いや、こいつはきいて置く値打があるぜ、錢形の親分——親分は二合半こなから坂の春日家の貧乏屋敷を知つてゐるかな」
「ええ、驚いたい、串戯じょうだんじゃねえ、二合半こなからが処フイにした。さあ、まあ、お乗んなせえ。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
血を雜巾ざふきんか何かにひたして、二合半こなから坂の春日邸下になすつたり、石垣を熊手か何かで引つかいて、あわよくば春日邦之助を無實の罪におとしいれ、自分は何時までもきれいなお孃さんと
息子むすこせいぜんにして、鬼神きじん横道わうだうなしといへども、二合半こなからかたむけると殊勝しゆしようでなくる。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私の父親は医師いしゃだったんだよ。……と云うお医師も、築地、本郷、駿河台は本場だけれども、薬研堀やげんぼりの朝湯に行って、二合半こなから引掛けてから脈を取ったんだそうだから、医師の方では場違いだね。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
第一番に行つたのは、二合半こなから坂の春日邦之助の屋敷でした。旗本は旗本に違ひありませんがこの邊に住んでゐるのは、軒並恐ろしい貧乏で、お勝手へ廻ると、まことにさんたんたる浮世小路です。
婦人おんな二人は、また日が暮れると泊りに来ました、いい工合に青緡あおざしを少々握りましたもんですから、宵の内に二合半こなからあおりつけて、寝床に潜り込んで待ってると、案の定、刻限もたがえず、雨戸カタリ。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)