事々ことごと)” の例文
ただ、道具の鈍いのは難で、素人離れのしないのは欠点といえば欠点だが、事々ことごとしく私へ弟子入りするほどの必要もないかと思う。
しからば僕よりも知恵の劣った人が悪口するなら、自分より劣ったものを相手とし、事々ことごとしく弁解する労を取るだけの価値がない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
秀吉は、事々ことごとに驚異した。——一致した精神力の強さといっても、よもこれほどまでとは今日まで考えていなかった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
田舎の小学校のことだから、卒業式の時には尋常三年でも事々ことごとしい答辞を級の代表生に朗読ろうどくさせるのが常だった。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
聖人の道と事々ことごとしくへども、前に云へる如く、六経を読破したる上にては、論語、老子の二書にて事足るなり。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
今さらその理由を事々ことごとしく自問し自答するにも当たるまい、こんな事は初めからわかっているはずである
小春 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
けれども表向おもてむき夫の権利を認めるだけに、腹の中には何時も不平があった。事々ことごとについて出て来る権柄けんぺいずくな夫の態度は、彼女に取って決して心持の好いものではなかった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
世に事々ことごとしく蛇の魅力というは、蛇にねらわるる鳥獣がその子供の命を危ぶみ恐れて叫喚するまでの事で、従来魅力一件を調べると、奇とすべき事がただ一つあるのみ、それは観察も相応に
一人息子の戦死した悲しみも事々ことごとしく人に向っては語りもしなかった。三十年連添った老妻浜子の病死もまた人間夫婦の生涯には、その中の一人がかならず経験せねばならないものと諦めをつけていた。
老人 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
僕はまだ同氏に面会するの機会を得ないが、氏の人格と、ことに氏が思想の人であることは彼のいうことなす事々ことごとによって明らかである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
こんな作に考証も事々ことごとしいが、他日の遺忘のためにただこれだけの事を書き留めておく。