両棲りょうせい)” の例文
日頃でも敵の中に半分、味方の内に半分、両棲りょうせいを常としている伊賀、甲賀の者は、すこしも敵地深く入って来たというような危惧きぐを持たないもののようである。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あたしは両棲りょうせい動物よ」と云うだけあってそう云うことには誰よりもつうであり、貞之助や井谷を相手に東京弁と大阪弁とのあざやかな使い分けをして見せるのであった。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「常に然り然りであり、その次に否々である、」と聖パウロが評したような人物に、ルナンは属していた。フランスの選良な人々は皆、この水陸両棲りょうせい的な信条に心酔していた。
地理は氷解、水ぬるむ、春水、春山の類をいふ。動物は大略けもの、鳥、両棲りょうせい爬虫はちゅう類、魚、百虫の順序を用ゐる。植物は木を先にし草を後にす、木は花木を先にし草は花草を先にす。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
僕は河童かっぱかえるのように水陸両棲りょうせいの動物だったことに今さらのように気がつきました。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
爬蟲はちゅう類と両棲りょうせい類ですね」
火星探険 (新字新仮名) / 海野十三(著)
もっともいけないことには、彼女はその水陸両棲りょうせい的な世界のうちに、あらゆる曖昧あいまいをきらう全き心をもってはいり込んでいた。彼女は一度信ずると、それに身を投げ出すのだった。