丑年うしどし)” の例文
丑年うしどしの大水でみんな死んじゃっただろう、おれは七つでさ、町預けになったけれどつまんねえから、きっぺと二人で逃げだしたんだ」
おさん (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
うちの賢夫人は丑年うしどし生れの大人物で、覚悟をきめて坐りだしたら、背筋をおッ立てたまま、まる一日でも動かずに坐っていることができる。
だいこん (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
丑年うしどしの母親は、しまいそうにしていた葛籠つづらの傍をまだもぞくさしていた。父親が二タ言三言小言こごとを言うと、母親も口のなかでぶつくさ言い出した。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
此人の代に、「寛政五丑年うしどしより暫の間三人半扶持御減し當時三人半被下置」と云ふことになつた。一鐵の歿年は二種の過去帳が記載をことにしてゐる。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
字の名前としてはこれが一番割・二番割または丑年うしどし縄受というような形で残っているが、それからまた一筆の大きさによって五反田ごたんだ・三反田という。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
江戸から踏んで来た松並樹まつなみきの続いた砂の多い街道は、三年前丑年うしどしの六月にアメリカのペリイが初めての着船を伝えたころ、早飛脚の織るように往来したところだ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
高価のものの売買も当丑年うしどし限り停止ちょうじ触出し置きたれば、残りたる物は年内最早三日に相成り、形を替えるか、崩すとも仕舞切しまいきりにいたすとも、きた寅年とらどし元朝がんちょうよりは急度きっと停止申渡す。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
又は煉瓦造に成りましたので、マア火事がございましても、焼ける道が塞がって居りますから、大きな火事がございませんが、開けぬ昔は折々大火がございました事で、丑年うしどしの火事、午年うまどしの火事
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
聞いてるとそうじゃないかと思うの、丑年うしどしの火事のことを知っていて、そのときおっ母さんと逃げた話をしたのよ、あの火事はいまから五年まえでしょ、そのとき八つだったって、口を
ちいさこべ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)