不縹緻ぶきりょう)” の例文
「それにわだば、——わたくしこんなに不縹緻ぶきりょうですから、せめてお針ぐらい上手にならなければ、お嫁に貰ってもらえませんわ」
あだこ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
小兵こひょうではあるが着飾らない程に身なりも整っておるし、一部でひどく悪口いうほど不縹緻ぶきりょうでもないし、才気を鼻にかける男とも見えない。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十八の富江と菊龍は乱れた髪やはれぼったい眼縁などでひどく不縹緻ぶきりょうに見えたにもかかわらず、その脈うちはちきれるような頬の赤らみと張りかたや
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
不縹緻ぶきりょうな愛子によって一層引き立って見えるところから、その単純な彫刻的な白い顔が、はしなく異郷にいる滝川の情熱をかき立てたものらしかった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
うちのおなべおんななら、おせんちゃんもおんなだが、おんなじおんなうまれながら、おなべはなんて不縹緻ぶきりょうなんだろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
底もふたもないよ。徳松の不始末が知れた上、主人の総兵衛は、お道のおしゃれで薄っぺらなのがだんだん嫌になったのさ。それに比べると、お杉は不縹緻ぶきりょうだが良い女だ。
『よくもまあこう不縹緻ぶきりょうが揃ったもんだ』とナヂェージダは、オリガと官吏夫人を見比べながら心に思う。それからカーチャを見て、『娘の方はまず十人並みだ』と思う。
決闘 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
美しいというほどではないが、不縹緻ぶきりょうというのにもあたらない。学問に対する盲目的な帰依が、美に対する感覚を消磨してしまった。むきだしの浅黒い肌。ボウボウの眉毛。
地底獣国 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
なぜかというと、女が不縹緻ぶきりょうで荒っぽいばかりでなく、まるで「吸出し膏薬こうやく」のようだから、というのである。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
在所は神奈川、年は三十、出戻りで不縹緻ぶきりょうで、御飯をくより外には、あまり能はありません。
孔明の新妻が、不縹緻ぶきりょうなことは、この俚謡りようもいっているとおり、村では噂のたねらしい。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なぜかというと、女が不縹緻ぶきりょうで荒っぽいばかりでなく、まるで「吸出し膏薬こうやく」のようだから、というのである。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)