不精者ぶしょうもの)” の例文
一種の勉強家であると共に一種の不精者ぶしょうものに生れついた彼は、ついに活字で飯を食わなければならない運命の所有者に過ぎなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
どうしても料理を美味おいしくつくれない人種がある。私はその人種を知っている。その名を不精者ぶしょうものという。
味覚馬鹿 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
と多少の心配があり、しかも不精者ぶしょうものの父親だからそう思いながら見守っているだけである。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
不精者ぶしょうもののわたしに取っては、それらの世話がなかなかの面倒であったが、いやしくも郊外に住む以上、それが当然の仕事のようにも思われて、わたしは朝晩の泥いじりをいとわなかった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
七時起床きしょう。戸を開けば、霜如雪しもゆきのごとし。裏の井戸側いどばたに行って、素裸すっぱだかになり、釣瓶つるべで三ばい頭から水を浴びる。不精者ぶしょうものくせで、毎日の冷水浴をせぬかわり、一年分を元朝がんちょうまそうと謂うのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)