不審いぶ)” の例文
「さにはあるまじ。いかで山がらすをさはおもふべき。あのなくね聞き給へ、よもあやまらじ」と不審いぶかしうなりて言へば
すゞろごと (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いちどかわやへ立つ姿は見たが、すぐ部屋へもどったきり、武蔵は断じてこの部屋を出ていないといって不審いぶかる。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
娘はそこで言葉を切り、顔をあげて、不審いぶかしそうに千之助を見た。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
女房は、すこし、不審いぶかしそうに、利平の顔を見た。
(新字新仮名) / 徳永直(著)
わたくしはちょっと不審いぶかしく
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
あまりにも意外な師の言葉として、自分の耳をうたぐっているような顔もあるし、また、法然と月輸殿の心理を不審いぶかって、二人の顔を横からひたいごしに凝視している者もある。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と——そのあでやかな被衣かつぎに似げない敏捷びんしょうさを不審いぶかって
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)