不寝番ねずばん)” の例文
お梅が帽子と外套を持ッて来た時、階下したから上ッて来た不寝番ねずばんの仲どんが、催促がましく人車くるまの久しく待ッていることを告げた。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
外部からの襲撃をうける心配のない人造島では、歩哨ほしょうも、不寝番ねずばんも必要がなく、ただ、動力所だけに、機関士が交替に起きているに過ぎない。
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
不寝番ねずばんの男は私たちを奥まった二階の部屋へ案内しました。洋室まがいに窓を狭め、畳が敷いてある様子までが、胡乱うろんに感じられる部屋つきです。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
深更、暁明よあけ、二度目の、おとないの響きに、今度は、宿屋の、不寝番ねずばんも、うたたねから目を醒されたのであろう——
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
貴重品ばかりの所であるから、夜は特別に二人居て交代で不寝番ねずばんをする事になって居たのである。
真珠塔の秘密 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
午後に重詰の菓子で茶を出す。果物が折々出る。便用には徒士かち二三人が縁側に出張る。手水ちょうず柄杓ひしゃくは徒士が取る。夜は不寝番ねずばんが附く。挨拶に来るものは縁板に頭を附ける。書物を貸して読ませる。
堺事件 (新字新仮名) / 森鴎外(著)