不定ふじょう)” の例文
将来のお世話は命も不定ふじょうのものですし、私も生き抜く自信の少ないものですが、そうお話を承った以上は決して忘れることはありません。
源氏物語:55 手習 (新字新仮名) / 紫式部(著)
かつぐこともなかろう。老少不定ふじょう、酔生夢死、まったく、貴公なんぞがこの御老齢まで生き延びるとは造化の妙という奴だ。サア乗ったり、乗ったり
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
如何にも貴様の云う通り人間は老少不定ふじょう。いつ死ぬるかわからん。俺の親父おやじも中気で死んどるけに血統すじを引いた俺も中気でポックリ死なんとは限らん。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
一所不定ふじょうの雲助め、往来の旅人を苦しめる雲助め、おそらく何かの弱味を見つけておれを強請ゆすろうという下心であろうと、今宮さんは彼を憎むの念が一層強くなりましたが
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
彼はせっぱつまって思い悩んだ揚句あげく、全く浮世を棄てて神仏にすがり四国遍路を思立った。しかるに、居処きょしょ不定ふじょうの身となり霊場をめぐっているうちに、片方の眼が少しずつ見えるようになって来た。
遍路 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「往生は一定いちじょうと思えば一定なり。不定ふじょうと思えば不定也」
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ふしだらな女が長生きをして気楽に仏勤めをして暮らすようなことも不定ふじょうと仏のお教えになったこの世の相であると、こんなふうに感じて、気分がしんみりとしてきたのを
源氏物語:20 朝顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)