三角洲デルタ)” の例文
水牛が、釣瓶縄つるべなわを引くと、絞め殺されるような音を立てる。陽は落ちんとして、マハナディ三角洲デルタはくらいもやのしたにあった。
一週一夜物語 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
が、これも三角洲デルタがあるから、一方の岸には遠い時でも、かならず一方には草色が見える。いや、草色ばかりじゃない。水田の稲のそよぎも見える。楊柳の水に生え入ったのも見える。
長江游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
むかし大川の河口の三角洲デルタがあったのを埋立てた土地で、母の若い時分は芝居小屋があったり、楊弓店があったり、かなりな盛り場だったそうですが、今は全く普通の住家町になって
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
川は大きな三角洲デルタをなして、街道は右岸を、北のサマーデン Samaden へむかうのであるが、線路はそれを対岸にして、フールン Fulun, 1913m. の裾でぐるっと廻って
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
三角洲デルタくすの森に降りる 枯れた梢に
閒花集 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
三角洲デルタは嗤ふ。
希臘十字 (新字旧仮名) / 高祖保(著)
この亀島町辺も三百年位前は海の浅瀬だったのを、神田明神のある神田山の台を崩して、その土で埋めて慥えたものである。それより七八十年前は浅草なぞは今の佃島つくだじまのように三角洲デルタだった。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)