万一もしや)” の例文
旧字:萬一
が、日を経るにつれて、この、考えてみると根拠よりどころのない期待は、薄らぐ一方だった。万一もしやはかない希望が、しんしんと心を刻む痛さ、寒さに、置き代えられて来た。
静子の行動しうちが、偶然か、はたこころあつて見送つたものか、はた又吉野と申合せての事か、それは解らないが、いづれにしても智恵子の心には、万一もしや自分が男と一緒に乗つてゐる事を
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)