一木いちぼく)” の例文
梅のほかには一木いちぼく無く、処々ところどころの乱石の低くよこたはるのみにて、地はたひらかせんきたるやうの芝生しばふの園のうちを、玉の砕けてほとばしり、ねりぎぬの裂けてひるがへる如き早瀬の流ありて横さまに貫けり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
一木いちぼく何十両、一石いっせき数百両なぞという——無論いまより運搬費にかかりはしたであろうが贅沢ぜいたくを競った。その地面にこけをつけるには下町の焼土では、深山、または幽谷の風趣おもむきを求めることは出来ない。
かくのごとき秋の寂しさわれ愛す枯木一木いちぼく幽かに光る
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)