一時ひときり)” の例文
舳櫓ともろを押せる船子ふなこあわてず、さわがず、舞上まいあげ、舞下まいさぐなみの呼吸をはかりて、浮きつ沈みつ、秘術を尽してぎたりしが、また一時ひときり暴増あれまさる風の下に、みあぐるばかりの高浪たかなみ立ちて
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
美「お茶でも飲んでお出でなさいな、そう大きに御苦労様………あなたあんまり遅いからお泊りに成ったのだろうから、私も今寝ようと思った処、あゝい塩梅に一時ひときり降ってから小降りに成りましたねえ、それにね蝙蝠傘は漏りはしませんか」
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
一時ひときり、何となく陰々とした広間が、ぱッとまたあかるくなりますとね、鶏がくるりと目を覚まして、莞爾にっこり笑ったように見えたんですって。——天狗が、同じように笑ったから不気味でしたの。
何でも熱海を掻攪かきみだして、一時ひときりお遊びになりましたものと見えます。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)