一国いっこく)” の例文
旧字:一國
「そんな一国いっこくなことを言って、大勢の威勢で打壊ぶちこわしにでも会った日には、ちっとやそっとの金では埋合せがつかない」
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「まったくあの宗匠は一国いっこくで、一旦こうと云い出したが最後、なんと云っても承知しないんですから」
半七捕物帳:36 冬の金魚 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
名「いえ中々一国いっこくもので、少しも人にこびる念がありませんから、今日こんにちすぐと申す訳には参りません」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
浜田屋の亀吉は強情と一国いっこくと、きゃんで通った女であった。豪奢ごうしゃの名に彼女は気負っていた。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
それは東京の中学校を落第して仕方なしに浦和へきた怠惰生たいだせいからの感染かんせんであった。孔子こうし一人いちにん貪婪どんらんなれば一国いっこくらんをなすといった、ひとりの不良があると、全級がくさりはじめる。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
盲人らしい一国いっこくさで、佐の市はなおも言い募りそうにするのを
誠に一国いっこくな事を申すようですが、わたくしは一体斯ういう正直な性質うまれつきで、私どもはこれ本陣だとか脇本陣だとか名の有る宿屋ではございませんで、ほんの木賃宿の毛の生えた半旅籠同様で
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
一国いっこくな人だねえ。そうして、これからどこへ行くつもりなの」